1.入居金(費用)の根拠法令
有料老人ホームの入居金等は法令により定められています。
[老人福祉法 第29条]
根拠条文 | |
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第29条第6項 | 有料老人ホームの設置者は、家賃、敷金及び介護等その他の
日常生活上必要な便宜の供与の対価として受領する費用を除く ほか、権利金その他の金品を受領してはならない。 |
第7項 | 有料老人ホームの設置者のうち、終身にわたつて受領すべき
家賃(中略)を前払金として一括して受領するものは、 (中略)当該前払金について 返還債務を負うこととなる場合に 備えて(中略)必要な保全措置を講じなければならない。 |
第8項 | 有料老人ホームの設置者は、前項に規定する前払金を受領する場合においては、 当該有料老人ホームに入居した日から厚生労働省令で定める一定の期間を経過する日までの間に、 (中略)契約が解除され、(中略)終了した場合に当該前払金の額から厚生労働省令で 定める方法により算定される額を控除した額に相当する額を返還する旨の契約を締結しなければならない。 |
2.老人福祉法の改正
上記の老人福祉法は平成24年に改正されたものです。この改正に
より有料老人ホームの入居金は大きく変わっています。
法令改正の内容 | ||
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変更箇所 | 現行法 | 旧来 |
入居金の性質 | 家賃または介護・日常生活の 便宜の供与の対価 権利金、契約金、事務手数料等の受領は禁止 | 多くの施設で利用権獲得の ための費用として設定 |
償却方法 | 実際の居住期間の進行に伴って費用が発生 (償却または毎月分納方式) 法定基準の新設 | 事業者の設定した償却方法 (一括償却可) |
返還義務 | 入居日から3ヵ月を経過しない 場合の法定返還義務 | 90日以内のクーリングオフ 行政庁による指導 |
3.クーリングオフの法制化
クーリングオフ | |
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対象期間 | 入居日の翌日から起算して3ヵ月 |
対象事項 | 契約解除の申出
※退去日が3ヵ月目の日を超過しても可 死亡による契約の終了 |
計算方法 | 初期償却分については全額返金。 毎月償却分については1ヵ月を30日として日割り計算で返金。 |
計算例 | 前払金:1,800,000円 うち初期償却分:500,000円 1ヵ月の家賃等の額:30,000円 [入居後50日で退居した場合] 9月25日に入居の場合、12月25日までが期間 (1)初期償却分500,000円は全額返金 (2)毎月償却分については50日分が償却 1ヵ月目は償却(30,000円) 2ヵ月目は日割り計算(30,000円÷30日×20日) ※費用は入居日から起算 (3)返金額:180万円−(3万円+2万円)=175万円 |
入居金の性格は平成24年の法改正により大幅に変わっています。
名称こそ「入居金」ですが、旧来型の「施設利用権獲得代金」が禁止
されており、実質的には全く別物になっています。
償却についても
ルール化され、「実際の居住期間の進行」に伴って費用が発生する
ことが基本となっています。
言い換えれば、現行の入居金は「一定期間支払う割増費用」と考え
られます。
消費者保護の観点からは、入居後短期間で多額の金銭が
掛からない仕組みとなっています。
難を言えば、この法令改正は
あまり世間に周知されておらず、一般消費者には旧来型入居金の
イメージが強いこと、
計算式が少々難解であることが挙げられます。